今回のナビゲーターは文学研究科の海老根剛准教授。
1930年代の一時期に一躍脚光をあびた演出家・映像作家であるバズビー・バークリーの仕事を振り返りました。
1930年代には、ミュージカル映画の中のワンシーンとして、大人数の女性が登場し、一斉に歌い踊る、という形式が流行しました。バークリーは主にこのシーンだけを監督するステージ監督でした。多くの場合は、映画全体を監督したいるわけではないので、特に日本ではあまり知名度も高くなく、知られざる監督と言えます。
バークリーの映像の中では、現実の世界から虚構の世界へ急激に移行、スケール感の急激な変化、といった特徴が見られます。現代の映画にも、実はバークリーの時代そっくりな映像が、紛れ込んでいるのです。
現代の我々がイメージする古典的なミュージカル映画は、1930年代半ば以降に確立しました。その中では、物語の中の日常世界と、物語の中の非日常の世界を、以下にスムーズにつなぐか、強く意識されていますが、その直前の時代に活躍した、バークリーの映像はそれとは全く対照的で、現実離れした映像がやや唐突な形で提示されます。しかし、その現実離れした感覚が、大恐慌の中の暗い時代には観客のニーズに強くマッチしたと言えます。
2008年後半以降の急激な経済的混乱の中で、われわれはバークリーの作品を改めて見つめ直す時代を迎えているのかも知れません。
参加者の中にはこの時代の映画に詳しい方もおられて、議論は大いに盛り上がりました。
