船場アートカフェ
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橋爪紳也
(都市文化論)
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(音楽学、ガムラングループ「マルガ・サリ」主宰)
福島祥行
(劇場論、劇団「浪花グランドロマン」代表)
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(GLOBALBASE プロジェクトリーダー)
海老根剛
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(小児医学、グループ・ダイナミックス)
増田 聡
(ポピュラー音楽研究)
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(文化産業論)
本間直樹
(臨床哲学、CSCD)
花村周寛
(ランドスケープ、CSCD)
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(都市コミュニティ論)
芝田江梨
(表現文化学博士課程)
石川優
(表現文化学博士課程)
カミス
(ダンス)
高岡伸一
(建築家)
檜垣平太
(neutral)

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Coco-Aのアーカイブ

好奇心星人の冒険―森木忠相写真展―

会期:2008年3月1日(土)-3月15日(土)
時間:10:00-19:00(3/1は13:00から、3/15は16:00まで)
会場:浄土宗應典院(入場無料)
(〒543-0076 大阪市天王寺区下寺町1-1-27 tel.06-6771-7641)

関連イベント
3月1日(土)14:00-17:00 オープニングイベント
出演:山口洋典(應典院主幹)×ワークショップ:ゴウヤスノリ(ワークショップ・プランナー)
3月8日(土)14:00- 法要
15:30- 音楽会 オーガナイザー:小島剛(電子音楽)×横沢道治(打楽器)
3月15日(土)13:30-15:30 ワークショップ「えんがわ寄席」
出演:岸健太(建築家)×松本力(映像/アニメーション作家)×飯田紀子(美術家)
16:00- お片づけ&打ち上げ

企画:森木忠相写真展実行委員会
主催:應典院寺町倶楽部×船場アートカフェ
協力:大阪市立大学医学部附属病院、大阪市立大学都市研究プラザ
NPO法人大阪アーツアポリア、直井健士(デジタルフォトCap@)、島津聖(矢野紙野株式会社)、林和美(ナダール)、山下里加(ハコプロ)、中上哲広(中上耳鼻咽喉科医院)
ディレクター:長谷川みづほ
ナビゲーター:山口洋典(應典院主幹)×山口悦子(船場アートカフェディレクター)
問い合わせ:campintheair@mac.com

 「入院して、儲かった!」―とある大阪市内の大学病院で、よりよい病院環境作りの旗印となっているこの言葉。患者さんやご家族に喜んでいただける医療というだけでなく、やりがいある職場作りを通じて「苦しみも哀しみも歓びも、患者さん・ご家族と職員が共に分かち合える病院作りを目指そう」という意思表示です。実はこの言葉、たった一人の少年が遺した言葉なのです。彼の名は、森木忠相、享年17歳。12年間の闘病生活をクリエイティブにアクティブに走り抜け、沢山の人々に影響を与えた人物です。
 忠相君は1987年生まれ。大阪市立金塚小学校院内学級を経て、高槻市立阿武山小学校、同市立阿武山中学校を卒業、YMCA学院高等学校総合学科へ進学して単位取得・修了した後、高3に進級しようという春、亡くなりました。生きていれば今年1月に成人式を向かえるはずだった忠相君。夢は保育士になることでした。
 忠相君の周りには、いつも多くの人が集いました。一緒に入院・通院していた子ども達や保護者の方々から慕われるのはもちろんのこと、病院中の職員から愛されていました。院内学級や地元の学校でも人気者。教師達は彼の「打てば響く!」才を愛で、その才を存分に引き出しました。医療者達はどんな辛い治療にも果敢に挑む彼の姿に勇気づけられ、一緒に走り続けました。
 闘病生活の中で忠相君は、病院・学校・地域で行われるボランティア活動や芸術家との共同制作にも精力的に取り組んできました。多くの学校関係者、研究者、音楽家、美術家、写真家等と幅広く交流していた忠相君。彼の影響力は絶大で、彼からインスピレーションを得た作家、彼にワークショップで助けてもらった芸術家もたくさんいます。
 本展覧会は、そんな忠相君の友人の一人である写真家・佐藤友孝氏と忠相君とのコラボレーション作品展。佐藤氏との交流の中から忠相君が撮影した写真を中心に思い出を綴ります。関連イベントは、トークショー・法要・音楽会と盛りだくさん。耳を澄ますと、忠相君と子ども達の楽しい笑い声が聞こえてきそう。でも本展覧会は回顧展ではありません。忠相君を知っている人も知らない人も、多くの人が立ち寄って、くつろいで、何かを”感じて”欲しい。そして集う人々の未来をつなぎ、あらたなご縁を結びたい・・・そのために、彼の輝かしくもなつかしい足跡をたどります。

Coco-A vol.7 インスタレーション「霧はれて光りきたる春」

 市大病院の早春賦・・・ 

『まだ肌寒い早春、3月初旬の夕刻―雫の落ちる音が全館に響きはじめる。「シューッ」という音とともに、病棟を貫く吹き抜けに立ちこめる霧。その霧が次第に晴れてくると・・・軽やかなオルゴールの音色と共に、光り輝くシャボン玉が降りてくる!各階の窓辺には、たくさんの人、人、人、そしてたくさんの笑顔が・・・。』 

 大阪市立大学医学部附属病院(以下、当院)には「アートプロジェクト」という名物事業があります。「アートプロジェクト」とは、芸術家が患者さんやご家族や病院職員と一緒に芸術活動をする、その共同制作を支援する病院業務のことで、医療の質や療養環境を改善するために組織された委員会「良質医療委員会」が担当しています。2009年度最後の「アートプロジェクト」は、花村周寛さんプロデュースの『Coco-A vol.7霧晴れて光り来たる春』。3月5日から12日のうち、たった4日間だけ行われたスペシャルプログラムです(1日は、雨天中止)。 

 花村さんは、2007年(アートインプログレス『Coco-A vol.4タングラムランドスケープ』)、2009年(インスタレーション『Coco-A vol.6風のおみく詩』)と、当院でアートプロジェクトに関わってくれたアーティスト。今回のイベントに先立ち、まず、良質医療委員会の中のアートプロジェクトを担当する作業部会の職員が、花村さんと打ち合わせました。当院から花村さんへのリクエストは、「病院中、どんなところを使ってもらってもいい。ただ一つ。職員から患者さんへ伝えたいたくさんの思いを、アートに乗せて。」というものでした。

  6階庭で「風のおみく詩」。中央は花村さん。(撮影:山口洋典)

6階庭「風のおみく詩」にて花村さん。(撮影:山口洋典)

 そこで、花村さんから「一度、病院内をフィールドワークさせてもらえませんか?」と申し出があり、作業部会メンバーの看護部副部長のコーディネートで、11月に実行しました。俳優でもある花村さんは、なんと「新しく着任した若手ドクター」のコスプレで病棟を訪問。看護部の幹部の方々、病棟の看護師さん達のノリもよく、楽しいフィールドワークとなりました。

 調査の結果、花村さんの目にとまったのが、病棟の吹き抜けだったのです。当院は18階建てのビルですが、病棟は6階から18階にあり、東西病棟のどまん中を吹き抜けが貫いています。この吹き抜け、元々は明かり取りとして作られたもの。そんなところでアートができるなんて誰も思いもよらないことでした。吹き抜けの窓からは、別の階の窓が見えます。下からのぞけば、空が見える階もあります。ここに“どえらい”出来事を起こしたら、みんな集まるんじゃないのか、そして窓越しにまなざしを交わしあうのではないか・・・花村さんは、そう考えました。

 花村さんの提案は、「入院中は何かと不安になりますよね。でも、希望がある。仲間がいる。」と、「霧」で不安を、「シャボン玉」で希望と“いのち”を表現するもの。6階から霧を発生させ、吹き抜け内に充填させた後、霧が晴れてくると同時に屋上18階からシャボン玉を降らせます。圧倒的に美しい、それでいて何処かなつかしくて、せつなくて・・・そんな風景を、吹き抜けの空間に出現させようというのです。

病棟を貫く巨大なライトコート(撮影:花村周寛)  

病棟を貫く巨大なライトコート(撮影:花村周寛)

 当院は、重症者を多く抱える特定機能病院です。病室や病棟から出られない人もたくさんいます。けれど病棟の窓辺なら、工夫すれば家族や主治医や看護師と一緒に見に来ることができる・・・医療崩壊寸前の、超多忙な現場の医療者にとっても、“職場”近くのイベントならば患者さんをサポートする業務の一環として参加しやすい。患者さんやご家族とも自然に交流でき、一石二鳥かもしれない・・・経営担当の副院長は、「吹き抜けなんて無駄だから病室にしようや、なんて話もあったのに、そこをこんなに利用してくれたのは、君が初めてだ!」と花村さんの発想に大感激。そんな巨大な吹き抜けを使った、国内の病院初の巨大イベントは、新聞にも大きく取り上げられました(3月9日毎日新聞掲載、4月1日読売新聞掲載)。

 とはいえ、前代未聞の巨大プロジェクト。準備段階から、多くの課題が浮かび上がります。資金、技術、リスクマネージメントと、何から何までわからないことだらけ。そこで、まずは病院設備・建物のプロフェッショナル、庶務課施設管理担当職員のところへ相談に行きました。当院の施設管理担当は、裏では「施設レンジャー」の異名を取るフットワーク軽快な機動部隊。実は当院のアートプロジェクト立ち上げの立役者で、船場アートカフェでのイベントにも登壇経験のある副課長がいるのも、この施設管理担当。副課長は、案の定、見事に花村さんのプログラムの罠?にはまり、「よっしゃ、おもろそうやんけ。やろう。」と相成りました(笑)。最初にやるべきことは、実験です。12月と2月に“ちょっとだけ”吹き抜けで霧を発生させてみました。ほんとにちょっとだけ、のつもりだったのに、吹き抜けの窓辺にはたくさんの人が集まり、花村さんは、この場所のポテンシャルの高さを実感したといいます。

 いよいよ、実施に向けての準備です。病院設備全体を使った一大プロジェクトです。しかも国内初、前例がありません。良質医療委員会に企画書が提出され、委員や病院幹部が検討した後、決済されました。企画と運営の中枢は、良質医療委員会の作業部会の一つ、ボランティア活動作業部会です。作業部会中心に「霧晴れて光りきたる春」プロジェクトチームを編成し、全ての運営を指揮して、病院中の部署・職員に協力要請をしていきます。まずは霧やシャボン玉を発生させる装置のために、特別な配線や配電が必要です。これは施設管理が担当しました。患者さんやご家族の様子に配慮し、療養生活の日常の流れの中で、自然にプログラムへの参加を促す主役は看護部の看護職員。各医局の医師にも、看護師と協力して患者さんをサポートするよう通達が回ります。

ポスター  

イベントのポスター。注意喚起の文書も含んでいるため、目にとまりやすいようにシャボン玉のデザインに。花村さんのアイデア。

 当院は、三次救急患者を受けいれる救命救急センターがあり、屋上ヘリポートにはドクターヘリが発着します。今回のイベントでは屋上に機材を設置するため、ヘリコプター発着に支障がないか、庶務課、施設、救急部で話し合って、対応が決められました。院内のお知らせ、広報やマスコミ対応、警備の指示は庶務課の職員が担当。トラブル発生時等の対応マニュアルを作成し、関係各所に文書で通達します。担当の警備会社の方々には、機材の搬入・搬出から音響まで、幅広くお世話になりました。患者さんからの問い合わせや相談に応じる医事課。病院中にポスターを貼ったり、たくさんのアンケート用紙を準備してくれるのは病院ボランティア。事務局は、専従のボランティアコーディネーターが担い、ボランティアの募集や指導も行います。資金繰りや運営面では、船場アートカフェのプロデューサーと事務局長が奔走。医学部だけでなく大学本学の事務も巻き込まれ、これまで当院で行ったアートプロジェクトの中でも、最大規模、最多の職員が参加したプログラムとなりました。もしかしたら、日本の大学病院だけでなく、大学で行う最大規模のアートプロジェクトだったのかもしれません。 

警備  お世話になったコアズさん。

 風景を際だたせる音楽の準備も並行して行われました。花村さんのイメージを作曲家に伝えて試作品ができあがります。しかし、入院中の患者さんの病状によっては、予測できない心因反応が起こる可能性があります。それに病院職員としては、病室から一歩も出られない患者さんがおられたとしても、病室で音楽だけでも楽しんでもらいたい、という思いもあります。そこで、そのような作品に仕上がっているかどうか、事前に病室のないフロア(事務部門、看護部、中央材料部のある5階)で、実際の院内放送用機器を用いて、看護職員や事務職員が試聴しました。その上で、「患者さんのためには、こうした方がよい」という忌憚のない意見を、花村さんと作曲家に伝えました。

 プロの芸術家に素人が“もの申す”のは、勇気の要ることです。2年ほど前まで、病院職員は「有名な芸術家の先生がおっしゃっておられるプログラムに色々意見するなんて・・・」と、企画書に対して意見をいうことに遠慮がちでした。でも、今回は「一緒に、患者さんに、素晴らしいプレゼントを贈りたい!」という気持ちが勝りました。花村さんと気持ちが一つになっていたのです。とはいうものの、音楽作りの苦労を知らない(笑)素人の要求は、花村さん達に本当に過酷な日々を強いる結果となりました。それでも、実験は2回も行われ、当日までの短い時間、職員と芸術家の“協働“作曲の努力はぎりぎりまで続けられました。

 開催当日の朝、花村さん、技術スタッフ、病院職員等が集合しました。「事故の無いよう、安全第一に!」と、気持ちを引き締めて準備に取りかかります。機材が搬入され、技術スタッフが手際よく設置している、その様子を、患者さん達が興味深そうに眺めます。同じ頃、屋上では、細心の注意を払って設置作業が進められていました。屋上での大がかりな機器設置作業は、開院以来経験のないことです。万が一、18階から人が落下するようなことがあれば、もちろん即死。小さな物が落ちても、6階の天井ガラスを突き破り、大事故につながります。どんな小さなこともおろそかにできない、そんな緊張感が漂う中、作業は慎重かつ迅速に進められました。

初日、朝。スタッフ集合。寒い!!  

初日朝です。スタッフ集合。早春は寒い!

屋上機器設置  

屋上の機器設置。厳重に、慎重に。

6階ライトコート底部での機材設置。  

6階ライトコート底部での機材設置作業。

 一方で、プロジェクトを記録する映像スタッフは、看護副部長に連れられて撮影場所となる病棟へ。患者さんの療養生活の日常に支障がないよう、病棟の看護師長と段取りを打ち合わせます。「入院の記念に映りたい」と撮影を希望される患者さんもおられる一方で、「恥ずかしいから映りたくない」という患者さんもおられます。このような病棟毎、患者さん毎の状況・様子に合わせ、看護スタッフが細やかに調整を行います。でも、当院のアートプロジェクトは患者さんだけでなく、病棟スタッフも一緒に作品作りに参加できるのが最大の特徴です。映像スタッフからの申し出に、俳優・女優を買って出てくれた医師・看護師のみなさん、超多忙な日常業務の合間の演技も、堂に入ったものでした♪

 夕刻になり、いよいよ、イベントのスタートです。院内放送が流れ、6階以上の吹き抜け周囲の蛍光灯が消されました。何かが起ころうとしている・・・そんな、快い緊張感が病院全館に漂います。窓辺には、患者さんや職員が次々に集まり始め、上へ下へと吹き抜けをのぞいています。と、スピーカーから静かに聞こえてくる雫の音。続いて、「シュー」という効果音とともに霧が発生し始めました。「うわー・・・」霧が吹き上げる6階では、ライトに照らされた幻想的な光景に、集まった人々から嘆息が漏れます。6階から18階まで霧が立ちこめるには十数分かかります。いったい次は何が起こるんだろうと、首を長くして待っていたそのとき・・・次第に晴れはじめた霧にかわって現れたのは、無数のシャボン玉!吹き抜けの空間を、ところせましと踊ります。

霧発生  霧発生!

人々  窓辺に集まる人々(撮影:平井祐範)

人々2  窓辺に集まる人々

 光り輝くシャボン玉に見入ってのぞき込んだガラスの向こうに見えるのは、各階の窓辺に並んだ人々です。気付いて互いに手を振りあう場面もあります。ご夫婦や友人同士で、ひっそりと窓辺に立ち、静かな時間を過ごしておられる方もありました。若い医師や看護師が、ご高齢の患者さんと親子のように寄り添う姿も。そこには「患者」とか「医者」とか「看護師」とか「事務職員」とか、そんな立場の違いを超えて、一つに結ばれた人々の笑顔がありました。

シャボン玉

シャボン玉が降り注ぐライトコート(撮影:平井祐範)

シャボン玉

シャボン玉

シャボンを眺める人々(撮影:平井祐範)

 舞台裏では、院長、副院長等病院幹部が、期間中ずっと見守りを続けました。看護部では、毎日、病棟の様子をモニターし、音響を細かくコントロールしました。素晴らしい光景を演出したのは、全国の有名なホールで特殊効果を担当している技術スタッフの方々。彼らの一糸乱れぬ活躍も、またイベント以上に見事でした。「施設レンジャー」から出動してきた配線や電気の専門職員が技術スタッフと連携し、病院設備の安全を守ります。警備の方々も、花村さんや技術スタッフとぴったり息のあった連携で、警備に音響にと大活躍。当日、技術の方々をお手伝いし、患者さんをサポートしながら、プログラムの解説をしてくれた、たくさんの学生ボランティアのみなさん。医療だけでなく様々な学部・専攻の方が集まり、交流しました。患者さんの中には、ポスターに書かれた花村さんの詩がほしいと、学生ボランティアに申し出る人も。学生達の若いあたたかさが、患者さんやご家族のみなさんに親しみを覚えさせたのかもしれません。

 毎日、イベント終了後に付近抜け周囲の窓ガラスに、点々と残された皮脂汚れ。イベント終了後、お掃除の方々にお世話になった、その汚れこそ、鼻の頭や額をくっつけて吹き抜けをのぞき込んだ人々が残したものでした。童心にかえって、一生懸命、シャボン玉に見入った大人達が残した跡だったのです。一日、たった30分のはかない時間。けれど、患者さんもご家族も職員も、みんな、笑顔で窓辺にならんだとき、そして、窓越しの各階にたくさんの仲間を見つけたとき、病院中があたたかな、そして力強い気持ちで満たされました。

仲間  

最終日、花村さんを囲んで、制作スタッフ・ボランティア・職員が集合。お疲れ様~。

 アーティストの方々は、「アートは、治療には役に立たない」と、おっしゃいます。けれど「アート」は、患者さんに、家族に、職員に、さまざまな「気づき」や「学び」を与えてくれます。間違えてはいけないのは、「治療は、患者自らが自分で選択する人生の一シーン」であること、「医療者は、患者の勇気を支え、病と闘う、人生の物語を共有する仲間」であるということです。アートは、厳しい、辛い治療を「自ら」選択していかなければならない患者さんとご家族に、そして、ともすると医療事故につながりかねない危険な治療に、患者さんの勇気を支えようと必死に取り組む医療者・職員達に、「前に進む勇気」を与えます。

 ただし、本当に進むかどうかは、私たち―患者、家族、職員―次第。それはアートから、私たちに投げかけられた「生きることとは何か?」という大きな、大きな、<問い>なのです。それを、どう受け止めて、どう立ち向かっていくのか・・・当院でアートプロジェクトを続けていくということは、そんな<問い>への一つの答え。いいかえると、患者さんやご家族、市民のみなさんと一緒に知恵を出し合って、勇気ある、やさしい病院に育っていきたい―智・仁・勇―という当院の決意でもあり、社会へのメッセージでもあるのです。 (文責:山口悦子)

※花村周寛さんのサイト flw moon innerscape

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開催日時: 2010年3月8日~12日 16時30分~17時(雨天中止)※終了しました。

会場:大阪市立大学医学部附属病院病棟

主催:大阪市立大学医学部附属病院×大阪市立大学都市研究プラザ

企画:大阪市立大学医学部附属病院・良質医療委員会ボランティア活動作業部会(WG)×大阪市立大学都市研究プラザ船場アートカフェ×花村周寛

運営(「霧はれて光きたる春」プロジェクトチーム):<アートディレクター>花村(ランドスケープデザイナー、船場アートカフェ・ディレクター) <院内ディレクター>山口悦(安全管理対策室、船場アートカフェ・ディレクター、ボラWG) ・丹後(看護部、ボラWG) <院内コーディネーター>冨山(庶務課、ボラWG)・式庄(庶務課、ボラWG)・瀬川(医事課、ボラWG) <施設管理全般>平井・武田・森・渡辺・西口(庶務課施設管理担当) <広報>田中(庶務課、広報担当) <警備>片山(庶務課・医事課) <事務局>杉山(庶務課、ボランティアコーディネーター、ボラWG) ・巽(庶務課、ボランティアコーディネーター、ボラWG) <制作指揮>石井(ボラWG委員長、皮膚科教授)<制作責任>荒川(良質委委員長、副院長)

制作スタッフ:関(音響、サウンド)、堀川(写真)、山口洋(写真)、松浦(映像)、諏訪(技術援助) 、毛利マーク(特殊効果)、 株式会社ギミック(特殊効果)、 株式会社シンエー(特殊効果) 、株式会社エアープロジェクト(特殊効果)

船場アートカフェ:中川(文学研究科、船場アートカフェプロデューサー) 、高岡(都市研究プラザ、船場アートカフェ事務局長)

協力: 17西病棟、9東病棟、10東病棟(撮影協力)、株式会社コアズ(警備)、市大病院ボランティアグループ「マーブルタウン」 、「大阪市立大学医学部学生ベッドサイドボランティア」、大阪府立大学・大阪大学・関西学院大学の学生のみなさん

※ご参加・ご協力いただいたたくさんの患者さん、ご家族のみなさん、職員のみなさん!本当に、有り難うございました!!

Coco-A vol.4 TANGRAM LANDSCAPE タングラムランドスケープ

Coco-A vol.4 

TANGRAM LANDSCAPE タングラムランドスケープ

実施期間:2007年1月21日~2007年2月18日

場所:大阪市立大学医学部附属病院小児科外来・改修工事用防壁

材料:カッティングシート

 『本企画は、大阪市立大学医学部附属病院の庶務課施設管理係×発達小児医学教室×船場アートカフェ(大阪市立大学都市研究プラザ)による共同試験プロジェクトです。大学病院の長い待ち時間を、小児患者さまおよびご家族に快適に過ごしていただこうと考案されたものです。』

大阪市立大学医学部附属病院(以下、市大病院)では、2000年から小児病棟を中心に、そして2003年からは病院組織全体が協力し合って「アートプロジェクト」という事業を支援していました。「アートプロジェクト」とは、知る人ぞ知る!市大病院の名物事業。アートといっても絵画や彫刻がたくさん飾ってあるわけではありません。病院だからといってアートセラピーでもありません。「アートプロジェクト」は参加型の芸術活動。あえていうなら“まちづくり”。パートナーであるプロの芸術家達と一緒に、患者さまやご家族、医療者も事務職員もみんなで楽しんで元気になる病院づくり運動なのです。

これまでにも関西だけでなく関東、そして遠くイタリアから若手を中心に数十名の芸術家がプロジェクトに参加。プロジェクトは長期入院が多い小児病棟や一部の成人病棟などでワークショップを実施するところから始まります。ワークショップは、のべ日数にして年間20~50日実施されており、この数字はおそらく日本一です。ワークショップを通じて参加者から生まれた作品群は、外来の展覧会で入院・外来患者さま・ご家族の皆さまはじめ病院中の職員に披露されます。独特な展示作品に、皆、ときにビックリ!楽しく、ときに癒され、ときにしんみり、ときに勇気づけられてきました。「入院して、もうかった!」といってくれる子ども、「待ち時間長くてよかったわ~」という保護者の方、「車いす生活で外にでられへんから(展示を見られて)うれしい。」と仲のよいご夫婦、もちろん病院職員も「いつものアート、次は何やるの?」と興味津々。こんな風に、市大病院では「アートは、退屈な日常をステキな風景に変身させる魔法の万華鏡!」という認識が、ひそかに広がっていたのでした。

今回のプロジェクト「TANGRAM LANDSCAPEタングラムランドスケープ」も、そんな名物プロジェクトの一環。2006年の12月のある日、小児科外来の改修工事を計画していた一人の施設管理係長は、ふと考えました。「工事の防壁って、白くて、大きくて、このままじゃつまんない。」彼が相談したのは小児科外来の外来医長。二人は「工事の防壁って、白くて、大きくて、だからアートで、なんかできそう!」と思いつきました。というわけで、その話が同じ大阪市立大学の船場アートカフェ(都市研究プラザ)に持ちかけられ、アーティストの花村さんに白羽の矢が立てられたのが、なんと忘年会の席。プロジェクトは超多忙な花村さんの年末年始を過酷に略奪しながら、順調に(?)滑り出したのでした。  

工事の開始は1月の半ば。年明けてすぐの施設管理係職員とのミーティングで花村さんの壮大な企画が披露されました。壁一杯に陸と海と空を描き、それをカンバスに子ども達が自由に空想の世界の物語を上描きして、日々、刻々と、共同制作が進行していく「タングラムランドスケープ」です。

タングラムとは、中国で生まれた図形パズルで7つの決まった形を組み合わせてさまざまな形を生み出すことができるもの。フランス皇帝ナポレオンや『不思議の国のアリス』の作者ルイスキャロルも夢中になったパズルだそうです。今回の企画では、カッティングシートで10色のタングラム・シールを用意して、人・物・生物を創り出していきます。お手本の形だけでも100種類以上!カッティングシートでできた空想の海や陸や空の上で、約3週間の工事期間中にどんな新しい形や物語が生まれていくのか・・・病院職員達はワクワクしました。

 

設営は、病院の外来業務のない土曜日に実施。花村さんの指揮下、船場アートカフェの事務局長はじめ施設管理係の係長他、医学生やボランティアが協力し合い、10時間以上にわたって作業しました。大きなカッティングシートを使って海や陸のカーブを表現し、真っ青な空を作るためにシワができないようシートを貼る作業は、予想以上に重労働。2~3人ずつ組になって高いところから低いところまで、まんべんなく、美しく貼らなくてはなりません。

 

10色のタングラムのカラーシールも、子ども達の手が届きやすい高さに設置しました。最後に「タングラムランドスケープ」のロゴを作ってできあがりです。

 

無機質な病院の待合室に、突如あらわれた真っ青な空と海!子ども達の驚く様子にほくそ笑みながら、月曜日の外来へ。ところが子ども達の反応は我々の予想を大きく裏切るほどエネルギッシュで爆発的でした。タングラムのルールがわからない小さな子どもは、色や形を思いのまま貼り合わせたり、重ねたりと一心不乱に楽しんでいました。診察が終わって帰らなければならない時間になると、「シール、持って帰ってもいい?」となごり惜し気にたずねてきました。大きな子どもは大人が手本をすすめても「初めから答えがわかっていたら、面白くない!」と拒否。新しい形を生み出そうと壁の前で頭をひねっていました。また、小さな子どもが手の届く高さを避けて、高いところや難しいところに描いていました。友達同士で物語を作りながらキャラクターを配置している子ども達もいました。

 

およそ3週間の工事期間中、さまざまな形、色、生き物、乗り物、人々が増殖して、小児科外来では賑やかで豊かな物語のハーモニーが響き続けました。

 

2月のある日、あらわれた時と同じようにタングラムの壁は、突然姿を消してしまいました。けれど壁の消えた後に出現した新しい小児科外来診察室の壁には、なんとカラフルなタングラムが!病院のボランティアグループが「タングラムランドスケープ」の企画を見て、マグネットシートで作ってくれたのです。子ども達は大喜び。今でも小児科外来の診察室の壁の前には、子ども達が待合い時間中にタングラムに熱中している姿があります。大きな空や海はないけれど、きっと子ども達にはそれぞれの物語の世界が見えているに違いありません。

 

「病院は、楽しく遊ぶところ!」子ども達は、大人達がしばられている病院の既成概念を軽々とひっくり返してしまいました。「タングラムランドスケープ」は、アーティスト花村さんの考えた巧妙な仕掛けと子ども達の伸びやかな発想力、そしてたとえアーティストでなくても頑張る職員達の知恵が出会えば、世の中を変えることができるかもしれない・・・そんな勇気を感じさせてくれる企画でした。市大病院は、またもや、子どもたちから大きな宝物をもらうことが出来たのです。

(山口悦子)

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「終わらない絵本」

病院で診察を待っている時間はいつもよりも長く感じられる。受付を済ませてから診察までの時間は長い時で2時間ぐらいになることがあるらしい。待合室のベンチに座りながら、白い壁をぼぉーっと眺めているだけの時間は子供にとっては特に苦痛だと思う。小児科の待合室には、子供が読めるように絵本が置いてある事が多いが、何度も通院していると一通りそこにある物語を読み終えてしまって、すぐにまた待っているだけのつまらない時間がやってくるのだ。

そんなことを考えていると、読むたびにお話が変わる絵本があればいいのになどと思ってしまう。いや、それよりも絵本そのものを自分で作っていければいいのにと思う。どんな登場人物が出てくるのか。そしてそれは誰とどこで出会うのか。診察を待つひとときに妄想を膨らませ、物語を作る。次の週にやってきた時に、そのお話が少し変化しているのに気づく。先週書いた物語は他の誰かが新しい登場人物を加え、新しい物語が生まれている。そうしてどんどん新しい登場人物やお話が書き加えられて行くことで、物語は果てしなく続いていくのだ。

そんな絵本があればいいなと思う。そしてそんな物語が絵巻物のようにずらっと広がる風景を見てみたい。だから病院の壁を「絵本」に変えることを考えたのだ。この作品は完成がなく、ずっと書き加えられ変化し続けるプロセスを表現したかった。ワークインプログレスなどとアートの世界で言われる事があるが、物語や風景はもともとそんなものなのではないだろうかと思っている。

そしてこの風景では絵の上手さは問題にならないようにしたかった。絵が苦手な子でも、参加してお話を作る事が出来る世界。しかもその登場人物は他の登場人物と何かの関係を持っていて、一つの世界観を持った風景が生まれる。そのためには何かのユニットを組み合わせて形を作ることが出来ないかと考えた。

(花村周寛)

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<企画実施体制>

アーティスト:花村周寛(船場アートカフェ)

ナビゲーター:山口悦子(船場アートカフェ・ディレクター)

企画:大阪市立大学医学部附属病院・運営本部庶務課施設管理係(平井祐範、石川慶二)   

大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学(服部英司)   

大阪市立大学船場アートカフェ(都市研究プラザ)(高岡伸一)

協力:大阪市立大学医学部附属病院・良質(QC)医療委員会(ボランティアWG)(巽花子)

作業協力:長谷川みづほ(アートマネージャー)・岡崎久宜・大岡・砂川諒子・高羅愛弓(大阪市立大学医学部ベッドサイドボランティア)

************************************************************************************************************** ―花村周寛(はなむら・ちかひろ)profile―

1976年大阪府生まれ。大阪府立大学生命科学研究科緑地環境計画工学修了。ランドスケープデザイナー。京都造形芸術大学非常勤講師。2005年より大阪大学コミュニケーションデザインセンター(CSCD)特任教員。都市デザインや空間デザインといった従来までのランドスケープデザインの領域をベースにしつつ、「風景」というキーワードで建築やプロダクトのデザイン、映像やグラフィック、映画や音楽、アートなどジャンルを超えた表現活動に取り組む。大学ではアートをベースにしたコミュニケーションデザインの研究と教育に携わる。2005年より船場アートカフェに参加。著書「マゾヒスティック・ランドスケープ」。

船場アートカフェは、大阪市立大学・都市研究プラザが都心で展開する研究・実践の試みです。

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